水源から蛇口まで、きめ細かな水質管理による安全で美味しい水づくり
近年のライフスタイルの変化に伴い、水道水に対する私たちのニーズは高度化、多様化しています。
こうした中、更なる水質の向上を目指し、東京都水道局では、平成16年度から「安全でおいしい水プロジェクト」を立ち上げました
そこでは、水道水に対する不安や不満を解消し、我々東京都民が安全でおいしい水を飲めるよう様々な取組みを行っています。
水道水の水質は、水道法に基づく水質基準に適合することが求められています。
各都道府県の水道局では、常に水道水の水質を良好に保つよう浄水処理を行っています。
さらに、水源から蛇□に至るまで、きめ細かな水質管理を行うことにより、安全でおいし
い水を供給できるように日々努力努してくれているのです。
ここでも東京都を例に挙げて、安全で美味しい水づくりの取り組みを紹介していきましょう。
高度浄水処理の導入
通常の浄水処理では十分に対応できない、かび臭原因物質、カルキ臭やトリハロメタンのもととなる物質等を除去・低減する高度浄水処理を導入しています。
利根川水系を原水とする全浄水場について、高度浄水処理の導入を順次進め、全量高度浄水処理の整備が完成しました。
簡単に説明しますと図でも示されているように、オゾン発生器によるオゾン処理を行います。
オゾン処理で、かび臭原因物質トリハロメタンのもととなる物質をオゾンの強力な酸化力で分解します。
次に、生活活性炭素吸着処理を行います。
活性炭の吸着作用と活性炭に繁殖した微生物の分解作用を併用して、汚濁物質を処理します。
徹底した水質管理
水道水質基準は、水道法第4条に基づいて厚生労働省令によって定められています。
こちらは水道法により検査が義務付けられ、水道水として基準値以下であることが求められるもので、「健康に関連する項目」「水道水が有すべき性状に関連する項目」「快適水質項目」「監視項目」などたくさんの項目に及んでおります。
第4条 水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなければならない。
①病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むもので ないこと。
②シアン、水銀その他有毒物質を含まないこと。
③銅、鉄、ふっ素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。
東京都水道局では、上記のうち、水道水のカルキ臭を引き起こす残留塩素やトリクロラミン、かび臭原因物質や有機物等8項目について、国が定めた水質基準より高いレベルの「水道水のおいしさに関する水質目標」を独自に設定し、目標達成のための取組を行っています。
水道水源林の適正管理
東京都と神奈川県の都県境となっている有名な川が多摩川です。
東京圏の一級河川でありながら護岸化されていない部分も多く、川辺の野草や野鳥が数多く見られる自然豊かな河川です。
その多摩川の上流域には、水道局か所有・管理する約2万2,000haにも及ぶ水道水源林が広かっています。埼玉県、山梨県にも隣接する広大な地域です。
森林に降った雨は、落ち葉などが積もる腐葉土をゆっくりと通過し、土に染み込み、地下
水として蓄えられます。
そして、川に少しずつ流れ込みます。
<広大な水道水源林>
水道水源林は、水道水の元になるきれいな水を育むとともに、土砂がダムに流れ込まないようにする働きをしています。
このような森林の持つ働きを将来にわたって維持するため、水道水源林を計画的に管理し、植栽により世代交代を図る必要があります。
間伐、枝打等の保育作業を着実に行うことで、水を育む豊かな森を守り、良好な水源水質を確保していきます。
しかし、海外からの安い木材の流通のせいで、国内の林業が不振となり、人手が足りず、手入れが行き届かなくなって、荒廃が進む民有林も多くなってきました。
東京都では、所有者が手放す意向のある森林を水道局が購入し、水道水源林として適正に管理していく民有林購入事業を実施しています。
国内の林業の復興は、我々の命の源である水道事業においても絶対に必要なことなのです。
残留塩素の低減化
水道水中には、衛生面から消毒用として塩素をいれています。
その一方で、残留塩素はカルキ臭の原因の一つとなることから、嫌がられる傾向にあります。
しかし、水道水の塩素は、ウイルスや細菌などを殺菌する目的で必要最小限投入されており、塩素が全く無い水は安全とはいえません。
特に、コロナウイルスなどの影響により、お水をしっかり殺菌することの重要性が高まってきています。
東京都水道局では、「おいしさに関する水質目標」を独自に定め、残留塩素濃度数をO.1mg/L 以上0.4mg/L以下としています。
この目標を達成するため、都内131か所の自動水質計器により日々の水質をチェックし、残留塩素の適正な管理を実施していきます。
また、水道水を各地域へ送る拠点である給水所に、塩素を追加注入できる設備を整備することで浄水場での塩素注入量を低減させています。
そうすることで、浄水場からの距離にかかわらず、残留塩素濃度が適切に保たれた水道水を供給できるわけなのです。
水槽水道の適正管理の推進
<マンションなどの貯水槽>
マンションなどでは、一旦貯水槽に水をためてからポンプ等で給水する貯水槽水道が多くみられます。
しかし、貯水槽内での水の滞留時間が長くなると、適正な残留塩素濃度を維持できない場合があります。
お客様のお話を伺うと、戸建てよりマンションにお住まいの方のほうが水道水のカルキ臭が気になるという意見が多いように思われます。
そこで、滞留時間が長いと推定される貯水槽水道について詳細を調査し、設置者に対して適正な管理に向けたアドバイスや指示を行うことも重要になります。
東京都では、貯水槽水道方式から直結給水方式への切替えを推進しています。
道路部の給水管を太くする工事を行うとともに、給水装置工事事業者の協力を得ながら、工事内容の無料説明などを実施しているとのこと。
また、小中学校の水飲栓を直結給水方式に切り替えも徐々に行われています。
日本の将来を担う、子供たちに蛇口からお水を飲むという水道文化を継承するため、私たちも日々努力していかなければいけませんね。